COLUMN

Byパイ子

2023.02.21

Vol.7 パプリカパウダー
- “ファッション”だけじゃない -

パプリカパウダー

スパイスとしてのパプリカは苦味とほのかな甘酸っぱさがある粉末。元々はチリペッパーの一種で、大航海時代にコロンブスがヨーロッパへ持ち帰ったものだったが、その後ハンガリーで辛みのないように品種改良された。風味が穏やかで主張が強くなく料理の味を邪魔しないことから着色のための香辛料として多く使われる。

 

 

使い勝手のいいものに出合うとテンションが上がるのは誰しもが同じだと思う。 親譲りで昔から“安物買いの銭失い”タイプの私だが、逆に夫は見栄っ張りなのか良いものに囲まれていたいタイプで、最近の私の買い物傾向は夫に引っ張られているような気がする。

そんなふうに買い物をしていると、自分の中で「これ買って良かった!」と思う機会が格段に増えた。モノ自体の機能や性能がいいのはもちろんだが、自分の生活スタイルに合っていたり、自分ではたいしたことではないと思っていたちょっとした困りごとが解決することで一気にストレスフリーになったりすることに気づいたのだ。

 

 

最近の個人的大ヒットは真空タンブラー。

何をいまさらと思われる人もいるかもしれないが、これが私の性格と暮らし方にぴったりフィットして、とても重宝している。

 

元々某コーヒーチェーンのプラスチック製のタンブラーは持っていたのだが、棚の奥にしまわれていて、新たに買い足す必要はないと思っていた。

そんな中、一時期定期的に訪問する取引先があり、毎回お茶を出してもらうのも申し訳ないなと思ってタンブラーを持っていくことに。ただ、自分の持っているものは車のドリンクホルダーに入らなかったり移動中にこぼれやすかったりしたので、もう少し使いやすいものをと思って仕方なしに購入することにしたのだ。

 

正直、物事を斜に構えてみる癖がある私にとって、マイタンブラーやマイボトルはただのお洒落だったり、悪い言い方をすれば環境意識への高さをアピールするものだったりするのかなと思っていた。言ってしまえば “ファッション”アイテムだろうと。(本当失礼だよね。お使いの皆さんごめんなさい)

 

今回購入したのは真空断熱技術に定評のあるアウトドアブランド・STANLEYの蓋つきのもの。タンブラーにしてはなかなかなお値段だったし、以前の私であれば絶対選ばなかったと思う。ただ、以前購入した安い真空のマグが、あまりにも保温機能が悪く、今回は機能重視で選ぶことに。

それがまぁ、なんと使い勝手のいいことでしょう。結局その取引先との仕事を終えてからも、毎日自宅で使っている。

カフェで仕事をする時には割引になるし、子どもに倒されてもこぼれにくいし、飲み物をチビチビ飲みがちな私でも冷めたり氷で薄まったりする前に飲みきれる。

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

そういう“意外と”使い勝手がいいものって誰しもそれぞれあるんじゃないかな。我が家のキッチンではスパイス自体がもうそういう存在だ。

味がいつも一緒になってしまう…洋風ならコンソメだし、和風なら醤油とみりんだし…そう思っていた時が私にもあった。

 

しかしスパイスと出合ってからその考えは一転。サラダにちょっとクミンを入れてみようとか、スープにコリアンダーシードを入れてみたらどうなるかな、とか思いつくままに使えば面白い風味ができあがって食卓が豊かになる。

 

ちなみに、パイマー店主に、意外と便利なスパイスを聞いてみると、

 

「パプリカパウダー」

 

と答えが返ってきた。個人的にはこの答えが既に意外だった。

なぜならパプリカパウダーは私の中で何に使えばいいかわからないスパイスベスト3に入るものだったから。それこそ今まで料理の後に振りかける“ファッション”としてのスパイスなんじゃないかと思っていた。

それが、彼曰く、

 

「彩りにも使えるし、油に溶けやすいからターメリックとの相性もいい。スパイスそのものにちょっとした苦味があるけど、熱した油に溶かすと独特な香りが出るから案外いろんな料理に使えると思う」

 

とのこと。

 

そういえば、昔パイマー店主がSNSにあげたホタルイカのアヒージョの写真が美味しそうで連絡した時に、ターメリックとパプリカパウダーを入れるのがコツと聞いた気がする。

 

その時に実際作ったアヒージョの写真を発見。

見た目ではよく分からないが、すごく香りが立って美味しくできた記憶がある。

ぜひ皆にも試してほしい。

 

ちなみにアヒージョといえば、スペインに新婚旅行に行った際に、市場内のバルで出てきた料理にもたっぷりパプリカパウダーがかかっていたのを思い出した。

 

タコのガリシア風を頼んだのだと思う。

写真を見るとえらい豪快な見た目だけど、パプリカパウダーで鮮やかさがプラスされているし、なにより香りが良かった。

スペインで使われるパプリカパウダーはスモークされたものが一般的で、他にも甘めのドルチェや辛みのあるピカンテという種類があるそう。

 

意外ついでに豆知識をもう一つ。

パプリカパウダーに使われるパプリカは、私たちがスーパーの野菜売り場で目にするパプリカとは別物なのだとか。別名ハンガリアンペッパーやスパニッシュペッパーと言われるもので、一回り大きくて太い唐辛子のような形のものらしい。名前にもあるように、スペイン料理ではもちろん、ハンガリーでも煮込み料理「グヤーシュ」を始めとした多くの料理に使用されている。

 

しかも、その食文化のきっかけとなったのが、パプリカにおけるビタミンCの含有量の多さをハンガリー人の研究者が発見し、ノーベル賞を受賞したこと。それ以降ハンガリーでは積極的に料理にパプリカパウダーを取り入れる様になったという。

一人の研究者の発見によって、一つの国の食文化がつくられる。文化は何がきっかけで起こるか分からないところが面白いなぁ。

 

 

見た目だけの“ファッション”スパイスだと思っていたパプリカパウダー。実は美味しさをプラスするいろんな使い方ができるし、身体にも良いときた。無知な自分に衝撃を与えるトリプルコンボをお見舞いされた気分だ。

 

世の中にあるあらゆるものには、私の知らない意味あいが隠されているんだろうな。たったひとつまみ、ぱらりと振りかけた赤い粉だとしても。

 

以上、今回はパプリカパウダーと便利な逸品についてのおはなしでした。

 

投稿者紹介
パイ子
東北地方出身。パイマーくんとパイシューちゃんとともにパイマー店主に仕える食いしん坊編集者。現在夫と息子と共に暮らしている裏日本の田舎町に移住する前は、大阪で10年遊び惚けていた。カレーはレシピを見ないで最終形態を楽しむ派。以前からハマっているチャイ作りで自分のベストを見つけられないことが最近の悩み。趣味は美味しいものと街中の面白いものを探すこと。大阪のカラッとした天気が恋しい日々を過ごしている。

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