COLUMN

Byパイ子

2022.08.11

Vol.5 ターメリック
- 性について話すこと -

ターメリック

日本ではウコンとして知られ、室町時代以前には主に薬用として使用されていた。生姜と同じく植物の根茎を利用し、独特の土臭さがある。黄色い色素成分であるクルクミンには抗酸化作用があり、アンチエイジングやがん予防にも期待されている。近年ではたくあんの着色や二日酔い防止ドリンクなどにも様々なところで目にするスパイスである。

 

元々雑誌編集の仕事をしていた私だが、仕事の資料以外では雑誌は年に数冊買う程度。残念なことに出版業界に貢献度の低い編集者だ。主に手に取るのはカルチャー誌やライフスタイルマガジンが多いのだが、先日何年ぶりかに女性週刊誌を購入した。

 

国際女性デーのタイミングで発売されていた「フェムケア特集」。今年の国際女性デーの前後では、こういったマス層にむけたメディアがフェムケアについて多く取り上げていたように思う。

 

そもそもフェムケアとはなんなのか。

 

フェムケアは「Feminine(女性の)」と「Care(手入れ、ケア)」をかけあわせた言葉であり、女性特有の悩みを最新の技術や医療グッズ(フェムテック)などをつかい解決するサービス全般を指す。

 

そのため、国際女性デーという機会に女性のことを社会に理解してもらおうという動きの一環として近年この話題が加速しているように思う。

 

 

 

 

 

国際女性デーといえばシンボルとなっているミモザの花も有名。

国際女性デーの38日は、イタリアではミモザの日と呼ばれ、男性から女性に向けてミモザを贈る習慣があるという。

この時期フラワーショップ界隈ではこのミモザの日に合わせてフェアやイベントが行われることも多く、街がイエローで彩られるのだ。

 

 

さて、イエローといえばスパイス界ではやはりターメリックが殿堂入りといったところではないだろうか。

実はこのターメリック、古くから女性たちに親しまれてきた歴史がある。インドの花嫁が行う特別なフェイスマスクとして使われるなど美容効果が高く、数年前には欧米の女性を中心にターメリックを使ったゴールデンミルク(ターメリックラテ)というドリンクも流行した。

 

 

そして、最近ではフェムケアの一つの選択肢としても考えられているという。

ターメリックに多く含まれるクルクミンという成分が生理痛で処方される鎮痛薬と同じくらいの鎮痛効果が発揮されるという研究もあり、薬に頼りたくないということから生理痛の緩和を期待してターメリックを摂取している人もいるそうだ。

 

 

 

前述したフェムケア特集の雑誌を手にした理由として、私自身が重度の生理痛を伴うタイプであることが前提にある。

初潮がきてから早20余年、学生時代は通学中のバスや電車、教室などで倒れたことも数知れず。時に嘔吐してしまうこともあったほどだ。

大人になるにつれて薬を飲むタイミングや対処の仕方など、うまく付き合えるようになってきていたのだが、子どもを産んでから育児中の生理痛のつらさに改めて悩むようになった。

 

 

生理で悩んでいる人の多くは、自分の身体以外にも社会に対してモヤモヤしている人が多い。

 

生理は月に一度という高頻度でやってくるにもかかわらず、私のように生理痛で倒れてしまう人もいれば、一切痛みがない人もいる。また、身体の痛みだけでなくホルモンバランスが崩れ、落ち込んでしまうなど精神面での不調が伴う人も多い。

その多様さや重要さを理解できていなかった今までの世の中故に、学校の性教育を男女別におこなったり、生理休暇に対する無理解が露呈したりするのだろう。

今や生理は隠さなければならないものではない。しかし、ナプキンの貸し借りは隠しながら行うという暗黙の了解がまだあるのも事実だ。

 

理解してもらえないもの、隠さなければいけないものの中でつらさを味わうことは、そのつらさを主張できない我慢につながってくる。

高校時代、生理痛で倒れている私は女性の養護教諭から「自分で歩きなさい」と言い放たれたことがある。生理痛への理解がない方だったのか「もっとしんどい人もいる」と言われ、休むことを許されなかった。

自分の痛みを理解してもらえないつらさ、崩れ去った保健室への信頼。以降、どんなにつらくても保健室へは行かないと決め、その結果教室で何度も倒れた。友人や家族にこの愚痴を言うことはあっても、教師のこの出来事を伝えたことは一度もなかった。

高校で習った方程式は忘れても、あの時の恨みだけは今後一生忘れないと思う。

 

 

この多様性の社会において、他人のことを理解する(もしくは理解しようとする)ことは、人々の行動を大きく変えるのではないだろうか。

女性特有の健康上の悩みにおいて、理解が必要なのはつらい本人だけではない。異性というだけでもない。今まで知らなかった社会なのかもしれない。

 

 

 

生理の症状は人それぞれ。近年ではそのつらさや大変さ、それに伴う社会とのかかわり方を改めて考え直そうという風潮が感じられ、光が差し込んできたように思う。

 

先日、インスタグラムで気になるアカウントを見つけた。

私が住んでいる地域に不定期で出店するポップアップショップ。そこには「性の健康に関しての発信」をおこなっていると記載されており、あまりにも気になったので訪れてみた。

 

冷えを予防するためのショーツにつけるパッドや、オーガニックコットンの生理用ナプキン、デリケートゾーン用のソープにセルフプレジャーアイテムなど、生理痛だけでなく、妊活やセクシャルケアについてのアイテムも取り扱うショップだった。

 

 

上記の写真は私が購入したグッズだが、なにより「性についての話ができる場所がある」というのが訪れた一番の収穫だった。

ここには、性における悩みが当たり前に存在し、羞恥なく性の用語が飛び交う。そして会話の中で「こんな選択肢もある」と提案がおこなわれるのだが、それは店舗に置いている商品だけでなく、ある研究に基づいたひとつの方法であったり、一般的に訪れやすい場所で取り扱っている商品であることも。

 

それは性に対する悩みが千差万別であり、セレクトされた特定のグッズだけでは拾いきれるものではないからかもしれないが、そうやって自分の悩みを理解して知識を預けてくれる場所は、女性にとって安心できる場所になると思う。

商品を買った帰り道、わたしはなんだかポジティブな気分だったし、なんなら次回の生理が少し待ち遠しい気にもなっていた。

 

 

そして、そこで聞いた話で特に興味深く感じたエピソードをひとつ、ここに置いていく。(女性の皆様も、男性の皆様にもぜひ聞いてほしい)

このポップアップショップは、学生街の大通りの一角で行われているのだが、意外にも通りすがりの男性が話を聞いていき、パートナーのために生理用品などを購入していくことが多々あるのだという。

この話は、生理で悩んでいる私からすると本当に嬉しかったし、世の中捨てたもんじゃねーな!と心底思ったのだ。

 

 

 

 

私の母は、私が結婚する時に夫に対して臆することなくこう話してくれた。

「この子は生理が人よりキツイから。それだけが私たちの心配しているところなの。だからそれは忘れずに理解してあげてね」

 

たまたま生理痛がきついタイプだったため、若いころから周囲に自分の生理の状態を話さざるを得ない状態だった私。しかし、それが逆に良かったのかもしれない。自分の中でも生理について話すことが当たり前だったし、就職するときも会社に対して事前に「私は生理がきついタイプです」と伝えていた。それにより、不調を伝えやすくなったと思う。

学生時代にも、私が倒れた原因が生理痛とわかると、友人や当時の彼氏、同級生のみんなは男女問わず生理に理解を示そうとしてくれる人が多かった。

 

もし、あの頃同じクラスだった男の子たちが今の奥様や彼女の生理に理解を示し、優しく甘やかしてくれる男性になっていたのであれば、私のひどい生理痛も一役買ったということで報われるのかもしれない。

 

 

世の男性諸君に、パイ子からのご提案。

パートナーの女の子が生理に苦しんでいるときには、温めたゴールデンミルク(ターメリックラテ)を作って差し出してみるというのはどうだろうか。

「パイマーってカレー屋のコラムに、生理痛がマシになるかもって書いていたからさ」なんて一言を添えてみたりして。

鎮痛作用が効くかどうかは別にして、必ずパートナーの心には効くと思うんだよね。

 

 

以上、今回はターメリックとフェムケアについてのおはなしでした。

 

投稿者紹介
パイ子
東北地方出身。パイマーくんとパイシューちゃんとともにパイマー店主に仕える食いしん坊編集者。現在夫と息子と共に暮らしている裏日本の田舎町に移住する前は、大阪で10年遊び惚けていた。カレーはレシピを見ないで最終形態を楽しむ派。以前からハマっているチャイ作りで自分のベストを見つけられないことが最近の悩み。趣味は美味しいものと街中の面白いものを探すこと。大阪のカラッとした天気が恋しい日々を過ごしている。

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